結跏趺坐は、座禅の最も基本的な座法であり、両足の甲を反対の太ももの上に乗せて、足の裏が上を向くように座ります。
この座法は、お釈迦様が悟りを開いた時の座り方と言われており、他の座り方と比べて最も姿勢が安定し、集中力がグッと増すことから座禅に最も適した姿勢であると言われています。
しかし、座禅の初心者や体が硬い方にとっては、この座り方は難しく、結跏趺坐ができないという方も少なくないと思います。
そこでこの記事では、そんな方々のために、結跏趺坐の基本的な組み方を解説するとともに、できない場合の原因と対処法もご紹介。
結跏趺坐をマスターして、座禅の質を高めていきましょう。
結跏趺坐とは
結跏趺坐の意味
結跏趺坐とは、座禅の最も基本的な座法です。
結跏趺坐は、「結」(むすぶ)、「跏」(か)、「趺」(ふ)、「坐」(ざ)の4つの漢字から成り立っています 。
- 「結」は、「結ぶ」
- 「跏」は、「一方の足を反対の足の太ももの上に乗せる」
- 「趺」は、「足の甲」
- 「坐」は、「座る」という意味です。
つまり、結跏趺坐とは、「足の甲を反対の太ももの上に乗せて結ぶように座る」という意味です。
結跏趺坐の種類
結跏趺坐は、左右どちらの足を上にするかで、「吉祥座」と「降魔坐」に分類されます。
吉祥坐(きっしょうざ)
右足を上にした結跏趺坐を吉祥坐と呼びます。なお、仏教用語で「吉祥」とは、めでたいことやめでたいことの前兆を意味します。
降魔坐(ごうまざ)
左足を上にした結跏趺坐を降魔坐と呼びます。なお、「降魔」とは仏教用語で、悟りの妨げとなるものを退けたりすることを意味します。
結跏趺坐のメリット
結跏趺坐は、足や股関節の柔らかさやバランス感覚が必要な座り方で、初めて挑戦する人にとってはなかなか難しいものです。さらに、足や股関節の可動域が十分でないと、結跏趺坐ができないばかりか、痛みを伴うこともあります。
では、他にも多くの座り方がある中で、なぜこのような難しい座り方が推奨されているのでしょうか?
その理由は「圧倒的な姿勢の安定」にあります。
結跏趺坐は長時間の座禅に最適な座り方
結跏趺坐以外の座り方(あぐらや正座など)は、足首が圧迫されるので長時間座るとどうしても足が痺れてきます。また、普通のあぐらでは骨盤が後ろに傾いて背骨が曲がりやすくなってしまいます。
一方、正しく結跏趺坐ができれば、自然に背中を真っ直ぐに保ちやすくなるとともに、足首が太ももに引っかかっるため股関節が動きにくくなるので、無意識に最適な姿勢をキープしやすくなります。
座禅を深めていくと、いつかは身心脱落(すべての自己意識から解放された状態)の境地に行き着きますが、そのときに姿勢に気を取られては困ります。
だからこそ、意識しなくても正しい姿勢をキープできることは非常に重要なことなのです。
結跏趺坐の組み方
Step1:片方の足の甲を反対側の太ももの上にのせる
Step2:もう片方の足も反対側の太ももの上にのせる
Step3:両ひざは地面につき、お尻と3点で身体を支える
結跏趺坐を行う際の3つの注意点
- 両ひざが地面について、お尻と3点で支えること。(膝が浮かないように注意)
- 肩の力を抜きゆったりとした姿勢を心がけるとともにお尻から頭まで一直線になるよう意識。
- 足に痛みがあるときは、結跏趺坐にこだわらず他の座法を選ぶこと。
結跏趺坐ができない理由
関節の柔軟性の不足
結跏趺坐をするには、股関節や足首、膝などの関節の柔軟性が必要です。
しかし、現代人はデスクワークやスマホなどで長時間座ったり曲げたりしていることで、関節や筋肉が硬くなったり衰えたりしています。
そのため、結跏趺坐をすると痛みや違和感を感じたり、しびれたりしてしまいます。
お尻の筋肉が硬い
お尻の筋肉(大臀筋)が硬いことも結跏趺坐ができない原因となる可能性があります。
大臀筋は、お尻の表層にある筋肉で、股関節の動きをサポートする役割があり、これが硬いと、股関節を外に回してかかとをおへそに近づけることができなくなってしまいます。
骨格上の問題
骨盤や股関節の形や大きさには個人差があり、結跏趺坐に適した骨格ではない場合もあります。
具体的には、股関節を構成する大腿骨の「前捻角」が大きい方がこれに該当し、内股ぎみの人に多い傾向にあります。
この場合は無理に結跏趺坐をする必要はありません。半跏趺坐や安楽座など自分に合った座り方を選ぶようにしましょう。
結跏趺坐ができないときの対処法
結跏趺坐ができない場合は、股関節や足首の柔軟性を高めることが大切です。
そこで、座禅をする前に、股関節や足首をほぐすストレッチを紹介します。これらのストレッチは、座禅の組み方に関係なく、誰でもできる簡単なものです。座禅をする前に、5分間ほど行ってみましょう。
足首・股関節・お尻のストレッチ
足首のストレッチ
このストレッチは、結跏趺坐に必要な足首の柔軟性を高める効果があります。やり方は、以下の通りです。
- 座った状態で、太ももの上に足首を乗せる。
- 足首を手で掴みゆっくりと時計回りに10回回す。
- 同じ足で反時計回りに10回回す。
- もう一方の足も同様に行う。
股関節のストレッチ
このストレッチは、内ももや股関節の柔軟性を高めることで、結跏趺坐に必要な足の外旋を容易にする効果があります 。やり方は、以下の通りです。
- 床に座り、両足の裏を合わせて膝を左右に開く。
- 両手で両足首を掴み、背筋をまっすぐに伸ばす。
- 息を吸いながら、膝を上げ下げしてバタフライのように動かす。このとき、背中は丸めない。
- 息を吐きながら、膝を床に近づけていく。(無理はしない)
- 10秒ほどこの状態で静止する。
お尻(大臀筋)のストレッチ
- 仰向けになり、両手で右膝を胸に引き寄せる。 膝の角度が90度になるぐらいが目安。
- ゆっくりと呼吸をしながらこの姿勢を15秒ほどキープ。
- 左足も同様に行う。
- 左右それぞれ5回ずつ繰り返す。
坐蒲や座布団で姿勢を安定させる
坐蒲(ざふ)や座布団などの補助具を使うと結跏趺坐がやり易くなります。
坐蒲(ざふ)
坐蒲とは、円形や楕円形などの形をしたクッションです。
結跏趺坐の際にお尻の下に敷くと、骨盤が前傾しやすくなり、背筋がまっすぐに伸ばしやすくなります。
また、坐蒲の高さや硬さによって、両膝の高さや開き具合を調整できます。坐蒲は専門店やネット通販などで購入できます。
座布団
坐蒲が用意できない場合は、硬めの座布団を二つに折って使います。
結跏趺坐を行う際、座布団をお尻の下に敷くと、坐蒲と同様に姿勢を安定させる効果があります。両膝の高さや開き具合を見ながら座布団の厚さや重ね方を調整しましょう。
なお、座禅の道具について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください↓
結跏趺坐の練習のポイント
練習時間と頻度
時間:無理せず徐々に長くする
結跏趺坐をする時間は、無理せず徐々に長くすることが大切です。最初は数分から始めてみましょう。
時間が経つにつれて、足が痛くなったりしびれたりすることがあります。その場合は、一旦足を伸ばして血行を良くしたり、マッサージしたりしてから再び結跏趺坐をしましょう。慣れてきたら、少しずつ時間を延ばしていきましょう。
頻度:毎日続けることが重要
結跏趺坐に必要となる柔軟性や筋力、バランス感覚などを高めるためには、毎日練習を続けることが重要です。
週に1回や月に1回ではあまり効果が期待できません。毎日決まった時間に行うことで、身体が慣れていきます。朝起きた時や夜寝る前など、自分の生活リズムに合わせて練習を継続していきましょう。
痛みや違和感があったら無理をしない
結跏趺坐は無理をすると逆効果です。痛みや違和感があったらすぐ練習を中断しましょう。無理をすると、膝や腰、足首などの関節や筋肉に怪我をする可能性があります。
また、痛みが強すぎると座禅にも集中できません。自分の身体の声を聞いて、無理のない範囲で行いましょう。
結跏趺坐ができない場合には、「半跏趺坐(はんかふざ)」がおすすめです。
結跏趺坐の習得までどのぐらいかかる?
結跏趺坐の習得まで期間は、毎日練習を続けた場合、数週間から3ヶ月程度でできるようになることが多いです。(柔軟性や筋力、バランス感覚などは、個人差があるのであくまで目安。)
結跏趺坐の習得を早めるには、毎日練習を続けることが重要ですが無理は禁物。ご自身の体の感覚に合わせて痛みや違和感があったら無理をしないことも大切です。もし無理をしてしまい痛みや違和感が長く続く場合は、医師や整体師などの専門家に相談しましょう。
また、結跏趺坐にこだわりすぎると、できないことに対するストレスを感じることもあります。結跏趺坐ができるようになることで、姿勢が安定し座禅により集中しやすくなりますが、でききない場合でも、半跏趺坐などで十分に座禅に取り組むことはできます。結跏趺坐ができるようになることは素晴らしいことですが、それ以上に重要なことは、自分の体と心に向き合って、座禅を楽しみ継続することです。
まとめ
この記事では、結跏趺坐の基本的なやり方とできない理由や対処法を解説しました。
結跏趺坐は難しい座り方ですが、正しい方法で練習を続ければ、多くの方ができるようになります。結跏趺坐ができるようになると、姿勢が安定し座禅により集中しやすくなるため、座禅の効果やメリットをより感じることができます。
結跏趺坐をマスターし座禅の質を高めて、健やかな毎日を送りましょう!
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