座禅を行う際、足の組み方には注意を向けると思いますが、実は手の組み方も重要。
代表的な座禅の手の組み方は、「法界定印(ほっかいじょういん)」と呼ばれており、両手のひらを上に向け、左手を上にして重ね、両手で楕円形を作ります。
この記事では、「法界定印」について、意味と歴史、やり方と注意点、効果や宗派・国による違いなどをわかりやすく解説します。
座禅に興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
「法界定印(ほっかいじょういん)」とは
座禅の最も基本的な手の組み方である「法界定印」は、仏教の「印相(いんそう)」の一つで、手の形で仏様の姿や教えを表すものです。
印相にはさまざまな種類がありますが、法界定印は、仏教の中でも特に禅宗で広く使われています。
法界定印の意味
法界定印(ほっかいじょういん)の意味がこちらです。
- 法界(ほっかい)
仏教用語で、「すべての存在が法(だるま)という一つの真理によって成り立っている」という意味。
仏教では、 『すべてのものは、因果の法則によって生じては滅び、常に変化している。しかし、その変化の中には、不変の真理や法則が存在する。それが「法」である。 すべての存在は、この「法」によって支えられており、この「法」を知ることで、苦しみから解放されることができる』とされている。 - 定
心を落ち着かせて、真理や法に集中することを指す。
定によって、心は清らかになり、悟りに近づくことができる。 - 印
手や指を特定の形に組み、仏や菩薩の特徴や悟りを表すもの。
つまり法界定印とは、「すべての存在と一体になって心を安定させる」という意味です。また禅定(瞑想)を行うときに組むので、法界定印は別名「禅定印」とも呼ばれます。
法界定印の歴史
法界定印は、インドで発祥した仏教の印の一つですが、その起源ははっきりとは分かっていませんが、仏教の起源にまで繋がる歴史を持っているとされています。
仏教の開祖である釈迦が悟りを開いたときの手の形が、法界定印であったと言われており、全国各地の仏像にも見られます。
なお、日本の禅宗は中国仏教の影響を大きく受けているため、法界定印を組むとき左手を上に置きますが、仏教の発祥地であるインドでは「右手を上に置く」など、国や宗派によっても少し違いがあります。
「法界定印」の組み方
座禅中に行う、法界定印の正しいやり方をご紹介します。
法界定印の正しいやり方
両手の指を重ねるようにして置きます。
きれいな楕円形になるように、手を重ねる位置を調整します。
座禅をしていると、自分の心がこの法界定印に表れてくるのがわかります。
眠くなると楕円形の形がひらべったく崩れてしまったり、また緊張しすぎた状態だと親指に力が入ったりしてしまいます。
肩の力は抜きながら、綺麗な楕円形が作れるように意識を研ぎ澄ませましょう。
法界定印の組むときの注意点・ポイント
法界定印をするときには、以下の点に注意をすると良いでしょう。
- 腕、肩の力を抜く
- 手の形は楕円形の形をつくる
- 手は安定する位置を探して置く
肩に力が入っていると、姿勢や心が安定しづらいので、まずは力を抜くようにしましょう。
あまり難しく考えずに力を抜き、自然に腕を下ろすようにするとやりやすいでしょう。
法界定印の悪い例①:親指に力が入りすぎている
過度な緊張をしたり、身体に力が入った状態だと、親指にも力が入ってしまいます。
一度深呼吸をして、ゆったりとした心と姿勢で手を組み直しましょう。
法界定印の悪い例②:集中が途切れ、親指が離れている
座禅中に眠くなってしまったときに、よく見られる手の形です。
手への意識が薄れると、親指も自然と離れてしまいます。
「法界定印」以外の手の組み方
座禅の手の組み方には、法界定印のほかにも、「合掌」や「叉手(しゃしゅ)」という手の組み方があります。
これらは、座禅の始めや終わり、歩くときや立つときにも用いられます。
合掌と叉手は、座禅の手の組み方の作法として、法界定印とともに覚えておくとよいでしょう。
- 法界定印
- 合掌
- 叉手
合掌の手の組み方
合掌とは、両手のひらを合わせる手の形です。
これは、座禅の前後に礼をするときや、警策(きょうさく)を受けるときなどに用いられます。
合掌のやり方は以下のとおりです。
指は曲げず、まっすぐに伸ばします。
手は中指の先が鼻の頭にくる位の高さにします。
また鼻からこぶし1つ分程度離した位置にしましょう。
このときひじは真横ではなく、少し下げるとやりやすいでしょう。
合掌をすることで、自分や周囲に感謝の気持ちを持って、座禅を終えることができます。
- 両手の指は曲げずにまっすぐ伸ばすこと
合掌の悪い例①:指が開いている
指はまっすぐに伸ばし、揃えるようにくっつけるのが正しい合掌です。
合掌の悪い例②:指先が上を向いていない
合掌では、指先は倒さずに上に向けます。
合掌の悪い例③:肘を張りすぎている
肘は真横よりやや下に下げるくらいが、丁度いい位置になります。
肩に力を入れすぎないようにしましょう。
叉手(しゃしゅ)の手の組み方
「叉手」とは、片方の手をもう一方の手で包むように握る手の形です。
座禅は本来禅堂で行われますが、禅堂内では叉手をして歩く・立つのが決まりになっており、普段の歩き方のように手を下げて歩くことはしません。
叉手のやり方は、曹洞宗と臨済宗で外側にする手が異なります。
ここではそれぞれのやり方について紹介します。
曹洞宗の叉手のやり方
曹洞宗の叉手のポイントは、右手が外側にくることです。
臨済宗の叉手のやり方
どちらも同じ叉手ですが、日本では宗派によって外側にくる手が異なります。
曹洞宗では右手が外側、臨済宗では左手が外側にくる形をとります。
宗派や国による法界定印の違い
座禅の手の組み方である「法界定印」は、宗派や国によっても組み方に違いがあります。
日本の仏教の宗派や、中国の禅宗での法界定印の手の組み方の違いを簡単にご紹介します。
日本の宗派による違い
日本の仏教の宗派には、禅宗や真言宗、日蓮宗などがあります。
これらの宗派では、法界定印にも違いがあります。
仏教宗派 | 法界定印の形 | ポイント |
---|---|---|
曹洞宗 | 法界定印 (左手が上) | 叉手は左手が外側 |
臨済宗 | 法界定印 (左手が上) | 叉手は右手が外側 |
真言宗 | 法界定印 (右手が上) | 修行は座禅ではなく 阿字観(あじかん)瞑想 |
日蓮宗 | 法界定印 (左手が上) | 修行は座禅ではなく 念仏を唱える |
初心者の方は、必ずしも覚える必要はありません。
座禅会に参加した際には、どちらの手が外側に来るか教えてくれますので、まずは座禅を楽しむことを大切にしましょう。
中国の禅宗との違い
中国の禅宗でも、法界定印を用いることが一般的ですが、日本の禅宗とは異なります。
中国の禅宗では、右手の上に左手を重ねるのではなく、左手の上に右手を重ねます。また、親指は軽く触れるのではなく、しっかりと合わせます。
これは、中国の禅宗では、法界定印は、心の平安と清浄を表すという意味があるとされているからです。
法界定印(座禅)の効果
座禅を行うと、「ストレスの緩和」「集中力アップ」「睡眠の質向上」など、心身の健康にポジティブな効果がたくさん期待できますが、その効果を最大限に引き出すには、正しい姿勢がとても重要です。
姿勢のポイントは、手と足の組み方を正しく理解し実践すること。
手の組み方については、ここまでに紹介した「法界定印」の組み方を実践していきましょう。
また、足の組み方については、以下の記事で「結跏趺坐」「半跏趺坐」などのやり方を詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
今回は、座禅の手の組み方の基本となる「法界定印」について、正しいやり方や由来について紹介しました。
正しい法界定印のやり方を学び、その際の注意点に気を配ることで、座禅の中で安定感と調和を維持することができます。また、座禅の手の組み方には他にも叉手などがあり、宗派や国によっても違いがあります。
座禅をする際には、手の組み方にも注意を払って、座禅の質を高めていきましょう。
最後に座禅についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひこの記事も参考にしてください↓