座禅や瞑想には、ストレスの緩和や睡眠の質向上など心身の健康に大きなメリットがあります。しかし、ただ座っているだけではその効果は得られません。
座禅や瞑想をする際には、調身(ちょうしん)・調息(ちょうそく)・調心(ちょうしん)という3つの基本を意識する必要があります。
この記事では、調身・調息・調心の意味とやり方や効果について、わかりやすく解説します。座禅や瞑想に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
調身・調息・調心の意味とは?
調身・調息・調心とは、座禅の基本的な作法であり、姿勢・呼吸・心の3つを調えることを指します。これらは互いに影響し合うため、どれか一つが乱れると座禅の質が下がってしまいます。
まずはそれぞれの意味を詳しく見ていきましょう。
調身の意味
調身とは、身(姿勢)を調える(ととのえる)ことです。座禅では、正しい姿勢を取ることが重要です。姿勢が悪いと、呼吸が乱れたり、疲れや痛みが生じたりして座禅に集中できなくなってしまいます。
座禅では、結跏趺坐(けっかふざ)もしくは半跏趺坐(はんかふざ)という足の組み方で座ります。結跏趺坐は両足をももの上に乗せる方法で、半跏趺坐は片足だけをももの上に乗せる方法です。どちらも両膝とお尻の3点で体を支えるようにします。
調息の意味
調息とは、息(呼吸)を調えることです。座禅では、胸式呼吸ではなく腹式呼吸(もしくは丹田呼吸)を行います。腹式呼吸を行うことによって、呼吸が深くゆっくりとしたものになります。
ゆっくりとした深い呼吸には、自律神経を整えたり、血流を改善したりする効果があります。また、脳内物質であるセロトニン(別名:幸せホルモン)の分泌を促すことで、精神的な安定感や幸福感を高めます。
調心の意味
調心とは、心(精神)を調えることです。座禅では、雑念や感情に惑わされずに無心になることを目指します。
しかし、無心になろうと思ってもなかなか難しいものです。そこで、「数息観(すそくかん)」という方法があります。
数息観とは、呼吸の回数を数えることです。自分の呼吸を一つひとつ、心の中で静かに数えます。十まで数えたらまた一から始めます。もし、途中で雑念などにより数を忘れてしまった場合は、気にせずに一からやり直します。
数息観を実践することで、意識が呼吸に集中し、雑念などを払うことができます。
調身・調息・調心のやり方とは
それでは、調身・調息・調心の具体的なやり方を見ていきましょう。
座禅をする前には、以下の準備をしておきます。
- 座禅用の座布団(坐蒲)を用意します。坐蒲がない場合は、二つ折りにした普通の座布団でも代用できます。
- 服装は締め付けないゆったりしたものを選びます。ネクタイやベルト、腕時計などは外します。
- 場所は明るすぎず暗すぎず、暑すぎず寒すぎない静かで落ち着ける空間を選びます。
- 食事の直前後やお酒を飲んだ後は避けましょう。
座禅に必要な道具や服装については、以下の記事にまとめているので参考にしてください↓
調身のやり方
座禅は「結跏趺坐」または「半跏趺坐」という方法で座ります。
結跏趺坐は最も姿勢が安定し、座禅では基本の座り方といわれています。
結跏趺坐の方法
- 坐蒲の上にお尻を乗せ、あぐらをかく。
- 右足を左足の腿(もも)の上に乗せる。
- 同様に左足を右の腿の上に乗せる。
- 両ひざは地面につけ、足の裏は天井に向ける。
- からだの重心は、お尻と両ひざの3点で支えるように意識します。
坐蒲…座禅専用の丸いクッションのこと。なければ座布団で代用
この姿勢は最も脊椎に負担がかからず、人が本来座りやすい形で、誰もができる座り方です。
しかし悪い姿勢が身についてしまった人や、体が柔らかくない方にとっては結跏趺坐での座り方が難しいことも多いです。
そのときは結跏趺坐より簡単な「半跏趺坐」を試しましょう。
半跏趺坐の方法
- 坐蒲の上にお尻を乗せ、あぐらをかく。
- 左右どちらかの足を、反対の腿(もも)またはふくらはぎの上に乗せる。
- 両ひざは地面につけ、上げた方の足の裏は天井に向ける。
- このときもからだの重心は、お尻と両ひざの3点で支えるように意識します。
両ひざを地面につけるには、乗せていない足をしっかりと内側に曲げます。
どちらも正式な座法ですが、半跏趺坐から始め、慣れれば結跏趺坐で座ると良いでしょう。
できれば最低半跏趺坐が良いですが、どちらの座り方も難しい場合には、正座やあぐら、椅子を使っても構いません。
長い時間正しい姿勢を安定させ、心をリラックスして座禅を行うことが重要です。
安定した姿勢をとる3つのコツ
- 左右揺振
身体を大きく左右に揺らし、揺らす幅を徐々に小さくしながら身体の中心軸を決めること - 必ず坐蒲または座布団を使う
坐蒲でお尻を高くすることで、両ひざが地面につき姿勢が安定します - お尻と両ひざの3点でしっかりと体を支える
また座禅中の手は法界定印という形で手を組みます。
手の組み方(法界定印)
- 右の手のひらを上向きにする。
- 右手の指の上に左手の指を重ねる。
- 組んだ手を足の上に乗せる。
- 両手の親指の先をつけ、親指と手のひらで卵形をつくるようにする。
手の組み方が気になって座禅に集中できない、という場合には「叉手(しゃしゅ)」でも良いでしょう。
叉手は右手の4本指を左手で優しく包みこみ、肩の力を抜いて両手を足の上に置きます。
慣れてくれば法界定印の形で手を組むようにしましょう。
なお、座禅の組み方について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください↓
調息のやり方
姿勢が調ったら、次に呼吸を意識します。
座禅では意識せずに自然な呼吸を行なってよいのですが、余計なことを考えないように息を数えて心を落ち着かせる方法をとります。
これを「数息観(すそくかん)」といいます。
数息観のやり方
- 口は軽く閉じ、鼻で呼吸をする。
- 「ひとつ」「ふたつ」と頭の中で数えるのに合わせ、呼吸をする。
例:「ひとー」で鼻から息を吸い、「つー」で息を吐く。 - 十まで数えたらまた一に戻り、これをくり返す。
呼吸を整えることが、次の調心につながっていきます。
浅い呼吸だと心が落ち着かず座禅にも集中できません。ゆっくりと体の中の空気を入れ替えるように呼吸をしていきましょう。
数息観について詳しく知りたい方は、「数息観とは?実践方法から効果や継続のコツまでわかりやすく解説」の記事を参考にしてください↓
調心のやり方
「雑念を捨てよう」「心を落ち着かせよう」と思うとかえって色んなことを考えてしまうもの。
何も考えないというよりも、呼吸に心を集中します。
それでもじっと座っていると、雑念が湧いてきますが気にしないこと。
また呼吸に意識を戻すことを繰り返しましょう。
- 目は半眼(はんがん)
→視線は1m先の床を見る。
顔はまっすぐのままうつむかず、視線だけを落とすと自然と半眼に。
座禅中に目を閉じると、かえって雑念が湧きやすくなったり、眠くなってしまいます。
目は斜め前の床を自然に見るように視線を落とすようにします。
調身・調息・調心の効果とは
調身・調息・調心を行うことで、座禅の効果が最大限に発揮されます。具体的には、以下のような効果が期待できます。
精神的な効果
- ストレスの軽減
- 睡眠の質の改善
- 自己肯定感の向上
身体的な効果
- 姿勢の改善される
- 首や肩、腰の痛み・疲れが取れる
- 下痢や便秘の改善
仕事への効果
- 集中力の向上
- 記憶力・判断力の向上
このように、座禅を行うことで心身の健康に良い効果がたくさん期待できます。
そしてこれは医学的・科学的にも証明されており、例えば、ストレスの緩和・リラックス効果についても下記のように証明されています。
「脳波にα波が混入するようになり、心理テストでネガティブな気分尺度の改善がみとめられた。」
「坐禅瞑想が脳幹のセロトニン神経を活性化して、脳波や心理状態の変化を誘発するものと考えられた」
日本神経学会「丹田呼吸法は全部前頭前野とセロトニン神経を活性化する」
セロトニンは、精神の安定や安心感や平常心、頭の回転をよくして直感力を上げるなど、脳を活発に働かせる鍵となる脳内物質です。
特に、ストレスに対して効能があり、自らの体内で自然に生成されるもので、精神安定剤とよく似た分子構造をしています。
医療法人社団 平成医会「セロトニンの増加が心身に及ぼす効果」
詳細な座禅の効果については、以下の記事にまとめているので参考にしてください。
まとめ:調身・調息・調心で座禅の質を高めよう
この記事では、座禅の基本である「調身・調息・調心」について、その意味とやり方や効果をわかりやすく解説しました。
座禅を行う際は、調身・調息・調心を常に意識することが大切です。この3つの基本を意識することで、座禅の効果が最大限に発揮され、心身のバランスを整えることができます。
座禅は、誰でも気軽にできる精神的なトレーニングです。ぜひ、この記事を参考にして、座禅に挑戦してみてください。(座禅についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事も参考にしてください↓)